頭部外傷の画像診断のfirst choiceは頭部CTですが、CTでは何も異常を認めない、しかし意識障害が遷延しているということがあります。
その場合に頭部MRIのみで診断できる病態があります。
頭部外傷でCTでは診断できずにMRIでのみ診断できる病態とは?
- びまん性軸索損傷(diffuse axonal injury:DAI)
- びまん性血管損傷(diffuse vascular injury)
- 脂肪塞栓症(cerebral fat emboli)
の3つが挙げられます。
びまん性軸索損傷(diffuse axonal injury:DAI)
急激な加速や減速による外力による軸索の損傷。
CTによる検出は困難であり、MRIのT2強調像およびFLAIR像で楕円形の高信号を示す。
他、T2*強調像や磁化率強調像(SWI)で微小出血を検出することができる。
※微小出血の検出には磁化率強調像(SWI)>T2*強調像が優れている。
びまん性血管損傷(diffuse vascular injury)
急な加速や回転などの外力により、微小血管が破綻することによる。
激突の直後から昏睡状態となり、大多数が数分〜数時間後には死亡するとされ、画像診断に回ることが少ない。
MRIの磁化率強調像(SWI)が有用であり、
- 側脳室に垂直に点状・線状の低信号
- 前角や三角部付近:側脳室に向かって収束するような低信号
を示す。
脂肪塞栓症(cerebral fat emboli)
大腿骨などの長管骨骨折
→非乳化脂肪滴である中性脂肪が循環系に流入
→肺、脳、皮膚などに塞栓を起こす。
そのため症状は、
- 呼吸器症状
- 中枢神経症候
- 皮膚点状出血
を起こす。
MRIの磁化率強調像(SWI)が有用であり、
- 白質・脳梁膨大部>小脳、基底核
を含めてびまん性に微細な低信号が分布する。
T2*強調像やT2強調像では検出出来ないか、出来てもわずかであることが多い。
参考文献:臨床画像 vol.34 no.4 増刊号、2018 P64-71