胸部や腹部のレントゲン検査を受けた際に、
「大動脈に石灰化の影があります。」
「大動脈に石灰化を認めています。」
などと指摘されることがあります。
大動脈の石灰化とは、文字通り大動脈の壁に認められる石灰化を指します。
今回は大動脈の石灰化についてみていきましょう。
大動脈の石灰化の原因は?
大動脈の石灰化の原因は大きく2つに分けられます。
- 変性(degenerative)
- 異栄養性(dystrophic)
による石灰化です。
変性による大動脈の石灰化
通常の石灰化は、「変性(degenerative)」による石灰化で、粗で不整な石灰化です。
動脈硬化に伴う粥状硬化(じゅくじょうこうか)で認められる変化です。
その動脈硬化の原因には、
- 高血圧
- 脂質異常症(高脂血症)
- 糖尿病
の他、喫煙、飲酒、加齢、運動不足などが挙げられます。
つまりこれらが原因で動脈硬化を起こし、大動脈の石灰化を引き起こすと言うことです。
この場合、CTやレントゲンで大動脈の石灰化は不整で粗な石灰化を示します。
では実際のCT画像を見てみましょう。
症例 80歳代 スクリーニング
腹部単純CTの横断像です。
大動脈を縁取るように高吸収(白い)の石灰化を認めています。
大動脈の石灰化の所見です。
続いて横から見た画像である矢状断像を見てみましょう。
大動脈を赤色で塗りつぶしましたが、その壁にはところどころ高吸収(白い)の石灰化を認めています。
動脈硬化による大動脈の石灰化です。
異栄養性による大動脈の石灰化
変性以外の原因としては、異栄養性(dystrophic)による石灰化があります。
これは、瘢痕化した大動脈の壁の内膜と中膜にカルシウムが沈着したもので、大動脈炎(大動脈の炎症)で見られるものです。
この場合、CTやレントゲンで大動脈の石灰化は鉛筆で書いたように細いのが特徴です。
ただし、異栄養性に加えて、粥状硬化を伴った場合は、不整になります。
若い人で大動脈の石灰化の原因は?
加齢も動脈硬化の原因となりますので、高齢者ほど大動脈の石灰化は見られるのが通常です。
若い人で見られた場合は、通常の原因の他に、高安動脈炎(高安病、大動脈炎症候群とも呼ばれる)を考慮しなくてはいけません。
大動脈の石灰化の治療は?
大動脈の石灰化を指摘された場合、治療方法としては、動脈硬化の原因を取り除くことです。
つまり、
- 高血圧
- 脂質異常症(高脂血症)
- 糖尿病
の治療、
- 喫煙→禁煙
- 飲酒→節酒
- 運動不足→運動不足の解消
を行うことが動脈硬化の進行を防ぎますので、大動脈の石灰化の治療と言うことになります。
最後に
人間ドック・健康診断などで指摘されることが多い、大動脈の石灰化の原因や治療、さらには実際のCT画像をみていだきました。
参考になれば幸いですm(_ _)m