整形外科で行われる腰椎固定術は、腰椎すべり症による脊柱管狭窄に最も良い適応があるとされますが、実際の臨床の現場では、変性椎間板や椎間板ヘルニアによる神経根症による疼痛に対しても行われています。
では、どのような目的で手術を行い、手術にはどのような種類があるのでしょうか?
今回は腰椎固定術についてまとめました。
腰椎固定術の適応
- 腰椎すべり症による脊柱管狭窄
- 変性椎間板による疼痛(疼痛緩和に必ずしも有効とは言えないが行われている)
腰椎固定術の目的
変形性腰椎症による疼痛を取り除くためには、
- 除圧:痛みの原因となる椎間板や変性した後方成分を取り除く
- 固定:椎体と椎体、椎体と後方成分を固定
の2点が重要です。
これにより、痛みの原因となる動的不安定性を防ぐのが目的となります。
変形性腰椎症における痛みの原因
- 椎間板および後方組織→取り除く(除圧)
- 腰椎の動的不安定性、動き→椎間に骨グラフトを置き、骨癒合させる(固定)
この腰椎固定術にはいくつか種類があります。
腰椎固定術の種類
- 椎間の固定を伴わない後方固定術(PLF:posterior lumbar fusion)
- 椎間固定と伴う固定術(IF:intervertebral fusion)
の2種類がありますが、固定の安定性は当然椎体同士の固定を伴うIFが上。
またPLFでは、椎間板全体にアプローチできないため、腰椎症の疼痛には、椎間板全体にアプローチできるIFが行われる。
さらにIFは前方から固定するのか、後方から固定するのかで、
- 前方椎間固定術(ALIF:anterior intervertebral fusion)
- 後方椎間固定術(PLIF:posterior intervertebral fusion)
の二種類に分けられます。ちなみに側方固定することもあります。
椎間板へのアプローチには、
- 前方からアプローチする→前方椎間固定術(ALIF:anterior intervertebral fusion)
- 後方からアプローチする→後方椎間固定術(PLIF:posterior intervertebral fusion)
- 椎間孔からアプローチする→経椎間孔椎体(固定術)(TLIF:transforaminal lumbar intevertebral fusion)
の3つがあります。
この中でも、椎弓、椎間関節を切除でき、神経根の除圧が可能なのは、後方椎間固定術です。
後方椎間固定術(PLIF:posterior intervertebral fusion)
椎弓、椎間関節を切除でき、神経根の除圧が可能ですが、椎間板への到達には、神経根や硬膜嚢があるためスペースが限られており、神経根損傷や硬膜断裂と言った合併症が起こりえます。
PLIFの場合、椎間腔に到達する際に、このように神経根損傷を起こす可能性がありますが、これを避けることができるのがTLIFです。
経椎間孔椎体(固定術)(TLIF:transforaminal lumbar intevertebral fusion)
TLIFでは、上下神経根が横切る間である後外側からアプローチすることで神経根障害を避けることができます。
腰椎固定術で用いられるデバイスとは?
腰椎固定術で用いられるデバイスには、
- 骨グラフト
- cage
があります。
骨グラフトは、本人の腸骨などから採取した自家骨が用いられます。
ただし、これだけでは椎間の骨癒合は十分に得られないことが多いことから、
- cage
- spacer
という補助的なデバイスを用います。
cageはチタンの金属製とプラスチック製など様々な種類があります。
それぞれ、
- 金属製:終板にかかる力が大きいメリット。金属アーチファクトのデメリット。
- プラスチック製:終板にかかる力がチタン製よりも弱いデメリット。金属アーチファクトは生じないメリット。ただし、プラスチック製であっても中にマーカーとして金属片がある。
があります。
これらのcageを使う際には、
椎間板を取り除く
→椎間板に(椎弓や関節突起を切除した際に得られた)自家骨小片をcageの中あるいは周辺に置く
ことで、cageにより椎体間のスペースを維持させます。
また、置いた自家骨小片が上下終板と癒合することにより動的安定性を得られるようになります。
つまり、
- cage→椎間腔の維持
- 自家骨小片→上下終板との癒合
を目的として置くということです。
またこれらを椎間板に配置するだけでは、不安定であり、椎間から逸脱する合併症が起こりえるため、多くは後方からpedicle screwで補強します。
参考文献:画像診断 Vol.38 No.9 2018 P955-957