腹膜にできる腫瘍、腹膜に発生している腫瘍を見たときにどのような疾患を鑑別に挙げなければならないのでしょうか。
頻度としては、何か別に原発巣があり、癌の転移による腹膜播種が最多です。
そのほか腹膜に原発する腫瘍の鑑別診断についてまとめました。
腹膜・腸間膜原発の腫瘍の鑑別診断
腹膜や腸間膜原発の腫瘍には
- 腹膜中皮腫
- 漿液性乳頭状腺癌(いわゆる腹膜癌)
- SFT(solitary fibrous tumor)
- Desmoplastic small round cell tumor
- 悪性リンパ腫、デスモイドなどの間葉系腫瘍
などが鑑別に挙がります。
腹膜中皮腫
中皮腫と言えば、胸膜が9割を占め、胸膜中皮腫のイメージが強いですが、1割弱は腹膜に発症します。
腹膜中皮腫は、
- Adenomatoid tumor
- 多嚢胞性腹膜中皮腫
- 高分化乳頭型腹膜中皮腫
- 悪性腹膜中皮腫
の4型に分けることができ、なかでも悪性なのは、悪性腹膜中皮腫となります。
ただし、前者3つも悪性転化することがあるので注意が必要です。
悪性腹膜中皮腫
悪性腹膜中皮腫はさらに
- 上皮型
- 肉腫型
- 二相型:治療の反応性がよい。
の3タイプに分けられます。
画像上リンパ節腫大や石灰化はまれ。胸膜プラークは 中皮腫を疑う手がかりとなる。
漿液性乳頭状腺癌(いわゆる腹膜癌)
いわゆる腹膜癌で、閉経後の女性に好発しますが、ごくまれに男性例もあります。
腹膜原発ですので、両側の卵巣は正常であることを確認します。
そのため、GOG(Gynecologic Oncology Group)の診断基準では、
- 両側卵巣の大きさは正常。
- 卵巣外の病巣が卵巣表層の病巣より大きい。
- 顕微鏡的に卵巣病変が無いか、あってもφ5mm以内。
- 組織・細胞学的特徴が卵巣漿液性腺癌と同じか類似。
となっています。
また、CA125が上昇することがあります。
治療は、上皮性卵巣癌や卵管癌と同様です。
SFT(solitary fibrous tumor)
SFTは、低悪性度線維性腫瘍に分類され、約8割が良性です。
境界は明瞭で、富血管性であるため造影CTやMRIで強い造影効果を認めます。
腹膜転移・腸間膜転移の腫瘍の鑑別診断
転移によるものは、
- 癌(最多)
- 腹膜偽粘液腫
- 肉腫
- 平滑筋腫など
があります。
そのほか、腫瘍と紛らわしいものとしては、
- 感染性腹膜炎(結核性など)
- 脂肪織炎
などが挙げられます。