胸部レントゲン検査(XP検査)を受けた際に、
「大動脈弓突出があります。」
と指摘されることがあります。
この大動脈弓突出(読み方は「だいどうみゃくきゅうとっしゅつ」)とはどういったことを意味するのでしょうか?
そこで今回は大動脈弓の突出についてまとめました。
大動脈弓突出とは?
まず、大動脈弓は胸部上行大動脈と下行大動脈の間にある文字通り弓状の形をした大動脈のことを指します。
胸部レントゲン画像においてもこの大動脈弓部は弓状の形をして捉えることができます。
この弓状の形が通常よりも突出している様子を、大動脈弓突出というのです。
大動脈弓突出の原因は?
大動脈弓突出の原因の多くは、動脈硬化によります。
動脈硬化は、加齢や高血圧、高脂血症などが原因となりますので、単に年をとるだけでも動脈硬化は進行します。
動脈硬化により胸部大動脈に起こる変化としては、
- 大動脈弓突出
- 下行大動脈の左胸腔内への突出、蛇行
があります。
動脈硬化を起こしていない若年者の胸部レントゲン画像と、動脈硬化があり、大動脈弓突出や下行大動脈の蛇行を認める胸部レントゲン画像を見比べてみましょう。
症例 20歳代 男性 スクリーニング
若年者の正常の胸部レントゲン画像です。
ここに大動脈弓部〜下行大動脈のラインを引くと次のようになります。
大動脈弓部で屈曲し、下行大動脈はほぼ直線で下行している様子がわかります。
症例 60歳代男性
続いて動脈硬化があり、大動脈の石灰化も目立つ症例です。
ここに大動脈弓部〜下行大動脈のラインを引くと次のようになります。
先ほどの画像と比べて、
- 大動脈弓が突出している
- 大動脈が蛇行している
様子がよくわかると思います。
いずれも動脈硬化による変化です。
動脈硬化による大動脈弓突出の治療
この場合は、高血圧、高脂血症などがあればそれらに対する治療が行われますが、動脈硬化に伴う大動脈弓突出そのものに対する治療は行われません。
その他、大動脈弓突出の原因となる病態は?
多くは動脈硬化により大動脈弓突出は起こりますが、若年者などに見られた場合は別の原因が隠れている可能性があいrます。
動脈硬化以外で大動脈弓突出の原因となるものは、
- 大動脈炎症候群(高安病)
- 重度の左ー右シャントを起こす疾患(動脈管開存症など)
などがあります。
この場合、それぞれの疾患の治療を行います。