卵巣腫瘍の取り扱いにおける大きな変化として、高異型度漿液性癌は卵管、腹膜の一連の病変として扱うように変更になったことです。
FIGO 2013 WHO 2014
卵巣腫瘍・卵管癌・腹膜癌取り扱い規約
- Ⅰ期:卵巣あるいは卵管に限局する腫瘍
- Ⅱ期:腫瘍が骨盤内に進展あるいは腹膜癌
- Ⅲ期:腫瘍が骨盤外に進展あるいは腹膜癌かつ/またはリンパ節転移
- Ⅳ期:遠隔転移(腹膜転移を除く)
卵巣癌の病期
卵巣癌は40ー60歳代で全体の71%を占めます。
- Ⅰ期:42%
- Ⅱ期以上:41%
Ⅲ期の中ではⅢC期が最多で半分を占める。
卵巣癌の組織型
- 漿液性癌
- 粘液癌
- 類内膜癌
- 明細胞癌
- その他
上皮性腫瘍が9割を占め、漿液性癌が最多です。
卵巣癌の治療内容
手術のみは22%と少なく、多くは化学療法が必要となります。
では卵巣癌における手術の目的とはどういうものでしょうか。
卵巣癌における手術の目的
卵巣癌における手術の目的は
- 組織型の確定
- surgical stating
を行うことです。
進行期を決定し、必要な手技を含む術式を行います。
卵巣癌における術式
両側付属器摘出+子宮全摘+大網切除 リンパ節生検。病変が疑われば切除します。
ただし、進行症例→肉眼的残存腫瘍がない状態(complete surgery)を目指した最大限の腫瘍減量術(debulking surgery)が奨められる
治療の流れ
手術→化学療法を行うことが多い。
手術のみで治療されるのは1aあるいは1b期で組織が明細胞癌以外のGrade1のみで、他は化学療法を追加します。
原発巣が摘出困難→術前化学療法(NAC)→手術あるいは化学療法となります。
卵巣癌における画像診断の役割
- 病変の広がり診断
- NACが適応となる病変の正確な存在診断
この2点を明確にすることが画像診断の役割となります。
卵巣癌のMRI画像診断
- 子宮、S状結腸、骨盤壁、膀胱への浸潤など骨盤内病変はCT寄りも優れている。組織分解能が高いため。
- 播種に対するDWIが有用。
- 被曝がない。
- 広範に撮影できない、空気のアーチファクトで小さな播種が見逃される事もがある。
※PETは空間分解能が低く小さな播種を見落とす可能性がある。
卵巣癌の伸展様式
最も多いのは骨盤内の直接浸潤と播種を介してが多い。
リンパを介して(骨盤内~傍大動脈リンパ節)はその次で、血行性は最も少ないと言われています。
直接浸潤で多いところ
- 腹膜翻転部
- 傍結腸溝(右の方が深く右に多いとされる)
- 大網(播種があると脂肪濃度の上昇→omental cakeとして充実性腫瘤にみえる)
Ⅳ期を示唆する病変
- 実質臓器転移
- 腹部骨盤外の鼠径リンパ節を含むリンパ節腫大 鼠径でも転移あればⅣb期となる。
- 胸水(細胞診→陽性ならばⅣa期)
これらを認めた場合は、手術の対称となりません。
optimal surgeryが困難とされる病変
- 腎門より頭側のリンパ節転移
- 腹壁浸潤
- 肝実質転移、被膜下肝転位
- 2cmよりも大きな播種
リンパ節評価
- 短径1cmを悪性とする。
- 腎臓よりも頭側に位置する後腹膜のびまん性に広がる結節
- 傍心横隔膜リンパ節腫大は腹膜播種と相関し予後不良 5mm以上で陽性ととる。
腹部、骨盤壁浸潤
- 膀胱、尿管、直腸の浸潤→婦人科だけでは手術できない
- 骨盤壁の筋層から距離が3cm、未満または腸管血管への浸潤はoptimal surgeryが困難とされる病変
肝周囲病変の評価
- 小網(肝胃間膜(左胃動脈が走行)
- 肝十二指腸間膜(固有肝動脈、胆管、門脈が走行)により構成)
- 肝胃間膜
- 肝鎌状間膜の脂肪が消失→転移が疑われる。
- 胃脾間膜(短胃動静脈が走行)
レポートに記載すべき内容
- 術中見えないかもしれない病変(管腔内病変:膀胱、消化管)肝臓、脾臓への転移、胸膜転移
- 骨盤、腹部、後腹膜、胸部切除可能病変 ※切除不能の可能性がある病変を警告
- 卵巣癌合併症 :消化管閉塞、水腎症、血栓症(骨盤内、IVC、肺)※卵巣癌は他の癌に比べて血栓症が多い。
- FIGO stage
- NACとなり得る症例の場合はガイド下生検に適した部位