腎腫瘍で内部に脂肪を認めた場合の鑑別は?

腎腫瘍で脂肪を認めた場合、どのような腫瘍の可能性があるのでしょうか?

CTでもわかるような明らかな腫瘍の場合は、腎血管筋脂肪腫(AML)がまず考えられます。

一方で、MRI検査のgradient echoのdual-echo法で撮影することにより、腫瘍の内部に脂肪を含んでいるかどうかがわかることがあります。

具体的には、in-phaseからopposed-phaseにかけて腫瘤内に信号が低下する(黒くなる)部位を認めることで脂肪の含有があることを判断します。

この場合は、

  • 淡明細胞腎癌(淡明型腎細胞癌):豊富な脂質・グリコーゲンを有する細胞質があるため
  • 乳頭状腎癌:腫瘍間質への泡沫細胞(脂質を貪食したマクロファージ)浸潤があるため
  • 脂肪の少ない腎血管脂肪腫の一部のタイプ(CTでははっきりとした脂肪がわからないもの)

が鑑別に挙げられます。

脂肪の少ない腎血管脂肪腫の一部のタイプとはどういうことでしょうか。

じつは、脂肪の少ない腎血管脂肪腫(fat poor AML)には、

  • hyperattenuating type(CT値が40-45HU)
  • isoattenuating type

の2つのタイプがあり、後者である、isoattenuating typeの場合は、脂肪の割合がhyperattenuating typeよりも高くin-phaseからopposed-phaseにかけて腫瘤内に信号が低下することがあります。

ちなみに、hyperattenuating typeは病理学的には、脂肪が4%程度とほとんど筋肉成分のAMLのことです。

腫瘍内にヘモジデリン(出血)を伴う場合は?

opposed-phaseからin-phaseにかけて腫瘤内に信号が低下する逆の場合は、腫瘍内部に

  • ヘモジデリン

を含有することを示唆します。

この所見が認められた場合は、乳頭状腎癌の可能性があります。

乳頭状腎癌では、間質、組織球、癌細胞の細胞質にヘモジデリンを含有することがあるためです。